撮らせてもらっていいかな?
いつもなら断るところを、二人は、カメラを前に微妙な距離を保って、立った。
「カッコいいスカート男子の彼氏はイサトくんで、カワイイ森ガールの彼女はカリンちゃんっていうの」
「どんな字、書くの?」
「……ふうん。イサトくんは勇ましく飛ぶって書いて「勇飛」で、カリンちゃんは植物の「花梨」なんだ」
「あ、二人ともリラックスして。手をつないでもらっていいかな? そう。……うーん、いいねえ」
「二人とも同じ学校? ……違うんだ。へえ、それぞれ男子校と女子高なのか。じゃあ、ちょっと寂しいね」
「中学も違って、高校になってから知り合ったの。友達の紹介でね。お互いよかったじゃん。カッコいい彼氏とカワイイ彼女、紹介してもらえてさ」
「これからどこ行くの? ……ああ、決まってないんだ。それもいいね。二人で歩くだけでもデートは楽しいし」
「……はいっ、OK! いいの撮れたよー。ありがとね、撮らせてくれて。採用されるかどうかお楽しみに。撮った写真は二人の住所に送るから。じゃ、このあとは二人で楽しんで」
会話の合間にもひっきりなしに鳴っていた蝉時雨のようなシャッター音がなくなると、辺りは静かになった。
取り残されたイサトと花梨は、街の中の喧騒の中で正に「ぽつん」といった感じだ。
声を掛けられてから、まるで嵐のような一時だった。
「……えっと、驚いちゃったね」
「ん? あ、ああ、そうだな。いきなりだったもんな」
「でもイサトくんが引き受けるとは思わなかったな」
「あ? そうか? オレだって、おまえが引き受けるなんて思わなかったぜ。もしかして雑誌に載りたかったのか?」
「えっ! そういうんじゃないよ。ただ……、ただあの人がイサトくんのことカッコいいって言ってくれたから」
「は、はあ? そ、それでなのか?」
「うん! 褒められて嬉しかったの。そういう格好してると変な顔する人が多いし、現にみんなも笑ったでしょ? でもわたしはカッコいいって思ったから。だからあの人がそう言ってくれたとき嬉しかったんだ」
「ばっ、莫迦っ。なに言ってんだよ。あんなの世辞に決まってるだろ」
「えー、そんなことないよ。わたしのはそうだと思うけど」
「なに言ってんだよ。おまえは可愛いじゃん」
「えっ?」
「あっ!」
互いに顔を赤らめ、視線を泳がす。
「……えっと、あの、ありがとう、イサトくん」
「は?」
「わたしのこと可愛いって」
「うっ……。いや、その、礼なんて言うなよ。……照れるじゃねえか。、あのよ、オレも、その、アリガトな。カッコいいって言ってくれて」
「うん。採用されたら、わたしたち、雑誌に載っちゃうね」
「そうだな。載ったら、ちょっとあいつらに自慢できるかも、だけど、ま、そんなこともねえだろうし」
「そうだね。だけど写真は楽しみだな。プロの人に撮って貰ったんだもの。それは自慢できるよ」
「おう。オレもそう思う、それに載ったら載ったで大変そうだしな」
花梨もこくりとうなずき、ふと会話が途切れる。
(イサトくんがカッコいいことを知ってもらいたいけど、女の子たちに騒がれるのはちょっと……)
(こいつがカワイイってみんなに言われるのはいい気分だけど、他の奴等にちょっかい出されるのかな……)
ちらりと互いが互いを見る。
ばちりと目が合って、一瞬驚き、すぐに笑いで誤魔化した。
「えっと、そろそろ行こうか。弁当入れる袋が欲しいんだろ?」
「う、うん。今、使ってるの、マチに穴が開いてきちゃって」
「ああ、使い続けてるとそうなるよな」
そんなことを話しながら、イサトと花梨は歩き出した。
休日で人出の多い街中を。
二人の間の距離は写真を撮ったときと同じく微妙なまま。
けれど、繋いだ手は離さずに……。
拙すぎるイラストでごめんなさい。ちょっと特殊なイラストでごめんなさい。
本来字書きなのですが、今回怖いもの知らずにもイラスト付きで投稿させていただきました。
いえ、字では表現できないものがあるよな〜と、まあ、そんな感じで。
ちょいと古いですが、スカート男子です。スカートの似合う男子、じゃなくて、
ファッションでスカートを穿いている男子、ですよね。だったらイサトくんが似合うんじゃないかと。
彰紋くんや泉水さんでは前者っぽいし、拙宅メインの狼犬ではごついそっちの職業の人になってしまいますから。(笑)
現代ED後、デート中の一こまと思っていただければよろしいかと。
最後に、こんなステキな企画をありがとうございます。
この一月間はずっとイサトくんのことを考えていたような気がします。
はっ、もしかして、ひよくさんの罠?! でもこんな罠なら喜んではまりますよ、いつだって。
one hand, one heart // ヤマダ寧乎